
この記事を書いた人:猫田 美咲 (Nekota Misaki)
猫ライフスタイリスト / ペット共生住宅アドバイザー
3匹の愛猫(茶トラ・黒・三毛)と共に完全在宅ワーク歴10年。「猫と人の双方が快適な住まい」をテーマに執筆・講演を行う。かつては仕事中の「猫ハラスメント」に悩まされたが、現在は「共存デスク」で平和に解決。
Web会議が始まった瞬間に限って、足元で「ナー!」と大声で鳴き出したり、企画書をまとめている一番いいところで、キーボードの上に「ドスン」と乗られたり…。
「今じゃないでしょ!」
在宅ワーク中、そんな悲鳴を上げそうになった経験はありませんか?
仕事は進めたいけれど、愛猫を邪険にするようで心が痛む。そんなジレンマを抱えているのは、あなただけではありません。
でも、安心してください。その困った行動は、決してあなたへの嫌がらせではありません。実は、あなたを母猫のように慕う「信頼の証」なのです。
この記事では、猫ライフスタイリストである私が、愛猫の不可解な行動を「愛の言葉」として翻訳し、さらに仕事を中断させずに猫と幸せに働くための「共存デスク」の作り方をご紹介します。読み終わる頃には、いつもの「お邪魔」が愛おしいギフトに変わり、明日からの仕事時間がもっと幸せなものになるはずです。
仕事が進まない!猫飼い在宅ワーカーの「あるある」悲鳴集
仕事中、ふと視線を感じると、モニターの横から熱い視線…。そしてキーボードの上に「ドスン」。わかります、その「今じゃないでしょ!」という気持ち。私も在宅ワークを始めた頃は、愛猫との攻防戦に明け暮れていました。
まずは、私たちが日々直面している「愛すべき妨害工作」の数々を振り返ってみましょう。「うちも同じ!」と頷くことで、少し肩の力が抜けるかもしれません。
- 鉄壁のモニターブロック
なぜか画面のど真ん中に座り込み、こちらの顔をじっと見つめてくる。「仕事なんて見てないで、私を見なさい」と言わんばかりの圧力。マウスカーソルを動かせば、画面上のカーソルを必死に目で追い、猫パンチが飛んできます。 - キーボードは極上のベッド
カチャカチャという音が子守唄なのか、あるいは指の動きが獲物に見えるのか。打ち込んでいる最中のキーボードは、彼らにとって最高のくつろぎスポットのようです。「nyaaaaaaaaaa」という謎のメッセージがチャット欄に送信されそうになり、冷や汗をかいた経験は一度や二度ではありません。 - 書類は座布団
紙の資料を広げた瞬間、その上にスライディング。紙のカサカサという音と感触がたまらないのでしょうが、大事な契約書の上で毛づくろいを始められると、さすがに焦ります。 - トイレ・ストーカー
ちょっと席を立ってトイレに行くだけなのに、ドアの前までついてくる。そしてドアを閉めると「入れてー!」と鳴き叫ぶ。まるで片時も離れたくない恋人のようですが、会議の合間の貴重な休憩時間が削られていくのも事実です。
かつての私は、こうした行動に耐えかねて、仕事部屋から猫を締め出したことがありました。しかし、それは大失敗でした。ドアをカリカリと引っ掻く音が延々と続き、挙句の果てにはドアの下の隙間から必死に手を伸ばしてくる…。その姿を見て、「私はなんてひどいことをしてしまったんだ」と自己嫌悪に陥り、結局仕事どころではなくなってしまったのです。
そう、排除することは解決策にはなりません。 私たちが目指すべきは、猫の気持ちを理解し、受け入れた上での「共存」なのです。
その行動、実は「愛の告白」です。不可解な行動の翻訳ガイド
では、なぜ彼らはこれほどまでに私たちの仕事を邪魔するのでしょうか?
獣医学や動物行動学の視点で紐解くと、そこには健気な理由が隠されています。ここでは、代表的な3つの行動を翻訳してみましょう。
1. PCに乗る・邪魔する = 「あなたの視線を独占したい」
「温かいから」という理由もありますが、それだけではありません。
猫は非常に観察眼の鋭い動物です。あなたがデスクに向かっている時、あなたの視線はずっとモニターやキーボードに注がれています。
ここで重要なのが、「PCに乗る行動」と「飼い主の視線」の関係性です。
猫にとって、あなたが熱心に見つめている場所は「価値のある場所」であり、PCに乗る行動は、あなたが最も注目している「飼い主の視線」を独占したいという強い欲求の結果なのです。「その四角い箱(PC)よりも、私の方が可愛いでしょ?」という、いじらしいアピールなんですね。
2. 顔にお尻を向ける = 「あなたを信頼しています」
作業中にデスクに乗ってきた猫が、くるっと回ってあなたの顔にお尻を向ける。「失礼な!」と思うかもしれませんが、これは猫界における最大級の賛辞です。
野生動物にとって、背後は無防備な弱点です。お尻を向けるという行為は、その弱点である背後を完全に預ける「信頼(Trust)」の象徴なのです。また、子猫時代に母猫にお尻を舐めてきれいにしてもらった名残で、「甘えたい」「守ってほしい」という気持ちの表れでもあります。
3. 夜中の大運動会(真空行動) = 「元気爆発!」
仕事が長引いて深夜になった頃、急にスイッチが入ったように部屋中をダッシュする「真空行動」。
これはストレスや異常行動ではなく、「真空行動」と「野生の本能」の密接な関係によるものです。完全室内飼いの猫は、狩りをする必要がないためエネルギーが余りがちです。この行動は、行き場を失った狩猟本能のエネルギーが爆発した状態であり、健康で元気な証拠と言えます。

猫を締め出さない!互いに幸せになれる「共存デスク」の作り方
行動の意味がわかっても、やはり仕事が進まないのは困りますよね。
ここで提案したいのが、精神論ではなく物理的な環境を変えるアプローチです。キーワードは「排除」ではなく「誘導」です。
1. 「猫転送装置」を設置する
これは多くの猫飼いさんの間で実証されている有名なハックです。
デスク環境の中に、意図的に猫転送装置(箱)を組み込むのです。
やり方は簡単。デスクの脇(あなたの視界に入る場所)に、猫が入れるサイズの箱やカゴを置くだけ。
猫には「狭い場所に入りたがる」という習性があります。デスク環境に「猫転送装置(箱)」という明確な居場所を用意することで、猫の習性を利用してキーボードの上から箱の中へと自然に誘導することができます。「ここは君の特等席だよ」と教えてあげれば、猫はあなたのそばにいられる満足感を得つつ、大人しく箱に収まってくれることが多いのです。
2. キーボードカバーの導入
どうしてもキーボード上が好きな子には、物理的な防御策も有効です。
キーボードの上に被せるアクリル製の「キーボードカバー(ブリッジ)」を導入しましょう。これなら、猫が手元に乗ってきてもキーが押されることはありません。猫の温もりを感じながらタイピングができる、まさに共存のためのアイテムです。
3. 仕事開始前の「儀式」
「仕事中は構ってあげられない」という罪悪感を消すためにも、仕事開始の10〜15分前を「全力で遊ぶ時間」に設定しましょう。
猫じゃらしで息が上がるくらい遊ばせて、ご飯をあげてから仕事モードに入る。猫は「狩り(遊び)→食事→睡眠」のサイクルで生きています。このリズムを作ってあげることで、仕事中はぐっすり寝てくれるようになります。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 猫をデスクから「降ろす」のではなく、デスクの上に「猫の場所」を作ってください。
なぜなら、猫にとって「飼い主のそば」は安心できる縄張りだからです。多くの人が「邪魔させないために遠ざける」ことを考えがちですが、逆転の発想で「デスクの端に専用ベッドを置く」ほうが、猫の承認欲求(そばにいたい・見てほしい)が満たされ、結果としてキーボードへの侵入が激減します。この「共存の知恵」が、あなたの仕事効率を守ります。
魔法の会話術「ゆっくり瞬き」で、もっと絆を深めよう
最後に、あなたから愛猫へ「愛してる」を伝える魔法の方法をお伝えします。
それが、「ゆっくり瞬き(Slow Blink)」です。
猫とふと目が合った時、そのまま見つめ合うと「威嚇(ガン飛ばし)」と受け取られてしまうことがあります。しかし、そこでゆっくりと目を閉じ、一呼吸置いてからゆっくり目を開ける。この動作を行ってみてください。
ゆっくり瞬きは、猫の世界において「敵意はない」「リラックスしている」ことを伝える愛情表現(Kiss)の手段です。
英国サセックス大学の研究チームによれば、飼い主が猫に対してゆっくりと瞬きを行うと、猫も瞬きを返しやすくなり、さらに飼い主の手に対して近づいてくる可能性が高まることが確認されています。
もし、あなたが瞬きをして、愛猫も同じようにゆっくり瞬きを返してくれたら…。
それは、言葉を超えて心が通じ合った瞬間です。「愛してるよ」「私もだよ」という会話が成立した感動を、ぜひ味わってください。仕事の疲れなんて、一瞬で吹き飛んでしまいますよ。
「お邪魔」さえも愛おしい。猫との在宅ワークを楽しもう
仕事中に愛猫が邪魔をしてくるのは、あなたが彼らにとって「世界で一番信頼できる、大好きな存在」だからです。
- PCに乗るのは、あなたに見てもらいたいから。
- お尻を向けるのは、あなたを信頼しているから。
- そして、そばに居続けるのは、あなたを守りたい(守られたい)からです。
そう考えると、画面を塞ぐその背中も、キーボードを踏む肉球も、すべてが愛おしく思えてきませんか?
今日からは、猫を締め出すのではなく、デスクの横に小さな箱を置いてみてください。そして目が合ったら、ゆっくりと瞬きを一つ。
それだけで、あなたの在宅ワークは、世界で一番温かくて幸せな時間になるはずです。
さあ、今すぐ横にいる愛猫を撫でてあげましょう。今日の「お邪魔」は、どんな愛の告白でしたか?


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